都市計画

フラックスタウン・熱海(2009)

プロジェクト名: フラックスタウン・熱海
計画年: 2009年12月
計画地: 静岡県
協同設計: 今村創平
構成・文:大西正紀、田中元子

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ATAMI2020
熱海は日本を代表する温泉地のひとつである。古くから保養地として名高く、1950 年代には新婚旅行や社員旅行の定番目的地ともなった。しかし近年は観光地としての新鮮みを失い、旅行先として敬遠される傾向にある。また地方都市として、少子高齢化や人口減といった問題にも直面している。今回、われわれは熱海を徹底的にリサーチし、「流動」を意味するフラックスをキーワードに、2020年の熱海を構想した。フラックスタウンとは、地形や既存の建造物などに縛られず、人やモノが自由に移動できる街を意味しており、景観や歴史的建造物、固定インフラなど既存の都市的構造物を活かしつつも、それらにとらわれることなく流動的に進化できる街を意味している。

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シェアリング・ヴィークル
斜面と海に囲まれ、高齢者から観光客までさまざまなニーズに対応を求められる熱海に対し、利用客にフレンドリーな街にフィットする乗り物を提案する。熱海の公共交通として陸上、海上、空中をシームレスに運行し、散在するさまざまな観光ポイントを繋ぐ「シェアリング・ヴィークル(SV=Sharing Vehicle)」である。全長4350mm、全幅1900mm、全高1650mm、軽自動車より一回り大きく、街路に溶け込む卵形のデザインは、熱海の街になじみ、大きさを感じさせない。SVの移動方法は4 モードある。トラムとして、街の中を走る軌道上を移動する「トラムモード」、自動車として路地を自由に移動する「自動車モード」、熱海を取り囲む山頂のうち3 カ所を空中で繋いだ「ロープウエイモード」、そして熱海湾内を移動する「海上移動モード」である。螺旋状エレベーター・タワーが、地上と空中の交通もシームレスにつなぐ。人々はSVを街中で気軽に拾えるだけでなく、携帯電話で空き車両の位置を確認したり、呼び出したりすることもできる。SV によって、個人単位で自由に移動できる「ネットワーク型パーソナル・トランジット」の世界が実現されることになる。個人個人の活動をフレキシブルに支援するSV は、人の可能性、街の可能性を呼び起こす存在となるだろう。

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流動する熱海
熱海の中心市街地は半径約2km。十分にコンパクトな都市の場合、従来のトラムLRT(軽量軌道交通light rail transit)よりも、個人や家族など少人数単位の移動を可能とするPRT(個人高速交通personalrapid transit)の方が、効率がよいことが、ロンドン・ヒースロー空港の「ウルトラ・パーソナル・ポッド」などで実証されている。われわれは、PRT をさらに展開させ、4 モードに変化する乗り物を、地域住民、別荘族、観光客それぞれがシェアをして利用することにより、タクシーに依存し高齢者に不便な熱海の現状を、誰もが自由に使える交通手段をもつフラックスタウンへと変化させる。SV に乗る経験そのものが新しい観光となる。昭和の雰囲気を漂わせた既存の旧市街地はそのまま残し、街の構造を活かしながら新しい交通網をレイヤリングして重ねる。SV に乗る経験そのものが新しい観光ともなり得るだろう。フラックスタウン・熱海は、未来型シェアリング・ヴィークルが生み出す脱開発型観光計画である。

詳細は、東芝エレベーター株式会社のホームページにも、掲載されております。下記ページ右下、「FUTURE DESIGN(広報誌)」をクリックしてご覧下さい。
http://www.toshiba-elevator.co.jp/

Villagilization(2005)

プロジェクト名: Villagilization
計画年: 2005年01月
計画地: アメリカ、フィラデルフィア
備考: Urban Voids:フィラデルフィア国際デザイン設計競技案
共同設計: Eric Sfar, Alexis Lagardeら

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空地が目立ちスラム化するフィラデルフィアを再生するためのプロジェクト。スプロール化した郊外地の荒廃を救うため、緑のネットワークを都市にかぶせる。緑のルートで囲まれた領域が新しい「ヴィレッジ」となり、これまでの茫漠とした郊外の広がりから、複数のコンパクトな居住単位をつくりだす。 都市郊外を緑で分割することで連結を生み出すという、逆説的な手法。

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Traveling Void(1997)

プロジェクト名: トラヴェリング・ヴォイド
計画年: 1997年11月
計画地: 京都府
備考: 国際コンペ「21世紀・京都の未来」設計競技提出案
共同設計: 槻橋修、樫原徹ら

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旅するヴォイド。100年かけてヴォイドがゆっくりと京都を横断する。100年の都市計画は難しい。そもそも都市計画の長期計画とはせいぜい20年、30年計画であって、100年後の未来を予測するのは不可能に近い。そこでわれわれは、都市を計画するのではなく、巨大な空白地帯であるヴォイドを旅させる(=破壊する)ことによってあらたな活力を生み出すことを提案した。新しいものをつくるのではなく破壊が生成を生む。われわれが計画するのは10年に一度、都市の方向性を決定するためのナビゲーターと呼ばれる都市建築物のみである。これは極端なことではない。そもそも京都の歴史がそうであった。活力を保つために、都市構造を大胆に再編し、地下のグランド・サーキットの進展にしたがって、旧市街地から自動車交通が減少していく。世界都市京都に向けたヴォイドの旅にしたがって、都市プログラムは再配置され、あらたな京都が100年かけて誕生する。

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